大阪地方裁判所 昭和59年(レ)97号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
一事故の発生について
新井進運転の小型乗用車(泉五七チ八七〇四号。以下新井車という。)と被控訴人運転の普通貨物自動車(以下北川車という。)とが昭和五八年三月二四日大阪府南河内郡狭山町西山台一丁目先交差点(以下本件事故現場という。)で衝突した事実は当事者間に争いがなく、右事実と<証拠>を併せ考えると、次の事実が認められる。
1 本件事故現場は交通整理の行われていない交差点で、南北に通じる道路(幅約5.40メートル)と東西に通じる道路(幅約5.43メートル)とがほぼ直角に交わり、北行道路の交差点南端から約1.8メートル南側手前には一時停止標識と停止線とが設置されている。
2 新井進は昭和五八年三月二四日午後六時ころ新井車を運転して南北道路を北進し、本件事故現場で左折しようとして自車前部が前記停止線から約一メートル北側にくる位置で左右の確認のため一時停止したところ、被控訴人が東西道路の交差点西側から後方の安全を確認することなく北川車を後退させて左折し同車左後部を新井車前部に衝突させて同車に後記損傷を与えた。
以上の事実が認められる。<証拠>中には、被控訴人は北川車を運転し北進していたが本件交差点で南行に転回させるため一旦左折して西行道路に乗り入れたうえ同車を右後(北)方へ後退させるつもりで西行道路に進入し停止した直後新井車が南方から北進左折してきて北川車右後部に衝突した旨の供述部分があるけれども、右供述部分は次の理由により採用することができない。
(1) <証拠>によると、被控訴人は本件事故発生直後自車の損傷のないことを確認したうえ新井車に近付いたところ下車してきた新井進から賠償金の支払を要求されて口論となり、被控訴人から進に対し一緒に警察に行くよう促したが、進はこれに応じようとせず控訴人会社の事故係を電話で呼び出し係員の到着するのを待とうとするので被控訴人はその必要はないと言つて進のついてくるのを待つたものの進は警察に行こうとしないので事故発生から約三〇分以上経過後やむなく北川車を運転して現場付近から立ち去つて帰宅しその日は警察に行かなかつたというのである。しかし、被控訴人としては自己の言い分が正しいのであれば進からの理不尽な賠償要求に応ずる必要は全くないのであるから、相手にならずに現場からすぐ立ち去るなり、進が事故現場に留まるというのなら自分一人ででも警察に出頭するか警察官を呼ぶといつた行動をとるのが自然であるのに事故現場から離れられない特別の理由もなく事故発生後約三〇分以上も進と応対していたこと、また原審証人新井欽也、同新井進(第一回)の各証言によると、控訴人会社の事故係である新井欽也が事故現場に到着し被控訴人に話しかけようとするや北川車を発進させて立ち去つたことが認められ(この認定を左右するに足りる証拠はない。)、これらを併せ考えると、事故発生後被控訴人がとつた右のような対応は、北川車が新井車に衝突されたのであれば通常考えられない不自然な行動であるといわなければならないものであって、本件全証拠によつても他に現場を離れたり警察に連絡できなかつたと思われる事情を合理的に説明できるだけの理由を認めることはできない。
(2) これに対し、<証拠>によると、新井進は住所・氏名を告げることなく本件事故現場を立ち去つた北川車のナンバーをメモしており、それを手がかりに警察を通じて被控訴人の所在を見つけ出し、控訴人会社はこれを受けて本訴提起前から被控訴人に対して繰り返し賠償要求をしていることが認められ、これによれば、新井進及び控訴人会社が事故後とつた行動は被害者側として自然かつ合理的なものということができる。
(3) さらに、前記証人新井進の証言内容はそれ自体一貫しており、その述べる事故態様は客観的証拠というべき損傷箇所の写真(前記甲第四号証)と比照しても矛盾するものではなく、右証言に照らし被控訴人の供述はにわかに採用し難い。
以上のとおりであり、他に前記認定を左右するに足りる証拠はない。
(吉田秀文 加藤新太郎 五十嵐常之)